英語と人生

英語の練習・学習方法と人生のあれこれ

男が死んだ

その男が会社をリストラで首になったのはまだ20代後半だった。世渡りの苦手だった男はその後ホームレスになった。生まれ育った農村から電車で2時間の都会で残飯を食べた。夜は段ボールの中で寒さをしのいだ。街の人々は男を見ると目をそむけた。男は誰としゃべることもなかった。

 

ある冬の朝、男は死んだ。空へと上がる階段のような橋を登って行った。やがてドアのようなものがあり、男はそれを開けた。白い霧がかかったような広い場所だった。中に入ると初老の別の男がすでにそこにいた。彼は事業で成功し街の名士だった。街に寄付をし、公園や図書館ができたのは彼のお陰だった。他人に対して思いやりがあり誰からも慕われていた人物だった。

 

どこからともなく、髭を生やし杖を持った大柄な男が二人の立っているところに現われた。その大柄な男は街の名士だった男に近寄ると、その手を握りこう言った。「おまえはよくやった。満点を与えよう。」 街の名士だった男は頭を下げ、前に進み、やがて姿を消した。

 

髭を生やした大柄な男は、次にホームレスだった男に近づいた。その肩に手を置き、「おまえはよくやった。満点を与えよう。」と答えた。ホームレスだった男は頭を下げた。そして先に死んだ男の父と母の姿を見つけようと歩き出した。